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学芸員コラムCOLUMN

2020年12月14日 更新 / 催事について

山形由美クリスマスコンサート

12月5日(土)、当館にて「山形由美クリスマスコンサート」が開催されました。毎年開催されるこのクリスマスコンサートは今年で10回目を迎えます。
新型コロナウイルス感染防止のため今年のコンサートは時間を短縮し、密を避けるため2部に分かれて行われました。

 

今回は「清らかなひととき」をテーマに、モーツァルトの「きらきら星」やブラーガの「天使のセレナーデ」、オネゲルの「牝山羊の踊り」などの他にラフマニノフの「ヴォカリーズ」やチャイコフスキーの「くるみ割り人形より 葦笛の踊り」といったロシア音楽が演奏されました。

ここでチャイコフスキーについてご紹介します。
チャイコフスキーはロシアを代表する作曲家で、交響曲やバレエ音楽が特に人気です。「くるみ割り人形」は「眠れる森の美女」、「白鳥の湖」と共にチャイコフスキーの三大バレエ作品に数えられ、今回演奏された「葦笛の踊り」はバレエ組曲の第7曲になります。

バレエ「くるみ割り人形」の台本の元になったのはフランス文豪アレクサンドル・デュマの童話ですが、作中では様々なお菓子の精たちが美しく舞い踊ります。題名にもなっている葦笛はフランス語でミルリトンと言いますが、フランスのノルマンディー地方に伝わる古い伝統菓子の名前でもあります。ミルリトンはアーモンド味のタルトですが、その風味はフランスの広大な農地を連想させます。バレエ舞台では3人の農婦風の女性が踊ります。実際の演奏でもフルートの軽やかなリズムがまるで踊っているようで、聞いていると童話の物語の様子が思い浮かばれます。

 

コンサート中盤ではピアニスト加藤昌則さんの即興曲コーナーがありました。こちらも毎年恒例のコーナーなのですが、お客様3人にそれぞれ好きな音を1つ選んでもらい、その3音を使って即興で演奏するというものです。加藤さんは貰った3音を使い、自分が見た美術館の風景を思いながら見事に演奏していただきました。

大きなホールで演奏するようになる前は、演奏家はサロンと言うこの演奏会のような小さな規模で演奏していました。観客と演奏者の距離が近く、時にはリクエストを貰って即興で演奏もしていたと言われています。当時のサロンの雰囲気を体験できたひとときでした。

 

今回ご来館いただいたお客様からは、「コロナで気持ちが暗くなる1年でしたが、素敵な演奏が聞けて年末の良い思い出になりました」など多くのお喜びのお言葉をいただきました。今年は当館もいくつもの催し物を中止せざるを得ない状況でしたが、感染対策を行ないながら少しずつ再開しています。来年もまだまだ予断を許さない状況だと思いますが、お客様の心の安らぎの場になれるよう努めて参ります。