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学芸員コラムCOLUMN

2021年3月4日 更新 / 企画展について

-Nu-裸婦展

 

冬の寒さが和らぎ、少しずつ春の気配が近づいてきました。
三甲美術館では3月2日から企画展「-Nu-裸婦展」を開催しています。今回のコラムでは、裸婦画の歴史と展示作品についてご紹介します。

 

【裸婦画の歴史】
現代では一般的な「裸婦画」ですが、明治~大正期の日本では警察が美術品や出版物を厳しく取り締まっていました。日本ではかつて街中で女性でも上半身を露にして労働に励む姿が見受けられましたが、開国によって裸でいることを恥とする西洋の観念が日本に広まり、これまでの裸で過ごす習慣を見直す動きが起こりました。

 

海外では既に裸婦画を描くことは広く受け入れられていたので、海外の芸術を学んだ日本の画家たちも裸婦画を描きますが、警察が裸婦画を猥褻なものとして規制しようとしたので、警察と画家たちは度々対立していました。
黒田清輝率いる白馬会の展覧会では、黒田の描いた裸婦画に警察が介入して布を巻いて隠した「腰布事件」が起こり、警察の処理に多くの批判が寄せられました。
この事件は新聞でも大きく取り上げられ、有識者の中でも裸婦画の取り締まりの現状を憂いていたことが分かります。

 

この事件以降、他の展覧会でも裸婦画の取り締まりが入り、規制を恐れて裸婦画を描くことを躊躇う画家も多くいました。しかし、規制されないよう描き方を工夫し制作を続ける画家もいました。
画家たちは規制の中でも自らの絵画思想を作品に表現しようと努力を重ねてきたのです。時代が進むにつれ規制も沈静化し、現代では自由に表現や鑑賞ができるようになりました。

 

【-Nu-裸婦展】
三甲美術館にも多くの裸婦画が所蔵されています。画家によって描く女性の体形や肌の塗り方が異なるので、それらに着目しながら鑑賞すると更に楽しめると思います。今回の企画展で展示されている作品の一部をご紹介します。

オーギュスト・ルノワール 『裸婦』
モデルとなったのは当時家事手伝いをしていたガブリエル・ルナールという女性。ルノワールは女体に美を見出し、晩年は多くの裸婦画を描きました。鍛えられて筋肉がついた肉体ではなく柔らかい豊満な身体の女性を描くのが特徴です。

 

熊谷守一 『裸婦』
熊谷といえばシンプルな作風が有名ですが、晩年の作風が確立する前はこの作品のように荒々しいタッチの油彩も描いていました。またこの時代は経済的な困窮で次男を亡くしたりと先の見えない毎日で作風を模索していたため、暗いトーンの作品が多いです。

 

伊藤清永 『裸婦』
兵庫県生まれの画家。実家の寺を継がずに画家の道へ進み、白日会や日展で活躍し、1996年には文化勲章を受章しました。彼も長い画家人生で一貫して女性美の表現方法を追求した人物です。温かな色の線を重ねて描かれた裸婦画は、その色彩から「発光する裸婦」と称されました。

 

この他にも、宮本三郎や藤島武二など全8点の作品を展示しています。展示期間は5月24日(月)まで!常設展の作品と合わせて是非ご覧ください!